整備新幹線の早期開業で経済効果がアップ
整備新幹線の開業前倒しを検討する政府・与党のワーキンググループの会合で、整備新幹線が早期開業すると経済効果が大きくなるという試算が示されたようだ。
北海道新幹線を5年、北陸新幹線を3年、九州新幹線を1年前倒しした場合、前倒しをしない場合に比べ、GDPへの経済効果が約4000億円大きくなるという。
2014年11月20日 SankeiBiz「3整備新幹線、早期開業でGDP4000億円増 国交省が試算」
試算はあくまでも試算であり、数字は作るものである。
与党としては、早く開業を進めたいため、当然ながら、このような結果が出るのは不思議な話ではない。
ただ、この試算は大きな問題があり、危険な試算ではないかと思っている。
試算方法について
国土交通省のHPで、今回のワーキンググループにおいて、どのような試算が行われたか、公表されていないので、具体的な試算方法は分からない。
しかし、上記の新聞記事を見ると、「前倒しにより地域間の交流人口が増えると指摘」とある。たぶんこれが、前倒ししない場合に比べて、GDPを押し上げる要因なのだろう。
ここでちょっと立ち止まって考えると、ある種、当たり前の話である。
開業を早めようが遅くしようが、本来的には地域間の交流人口に増減が生じるはずはない。特に、早期開業などによる人間の心理的な影響や人々への行動への影響などを、試算には組み込めない。
しかし唯一、影響があるとすれば、人口減少だ。
早く開業したほうが、高齢化の進み具合も小さく、人口も多いため、交流人口は多くなる。逆に、遅くすればするほど、高齢化は進み、人口は減少しているので、交流人口は少なくなる。
オリンピック開催の影響、割引率などといった点も考えられるが、試算において最も大きな影響は、人口減少だと思われる。
危ない試算
私は、新幹線早期開業に反対だとか、そういうことを言うつもりはない。
ただ、人口という要素を試算に組み込んだ場合、すべての公共事業などについて、早くやったほうがよくなってしまう。
これでは、公共インフラのライフサイクル、建設需要の平準化という点で問題が生じる。
言い方を変えれば、首都圏などの市町村で人口が維持・増加しているようなところは、公共事業を後回しにしてもいいかといえば、そういうわけにはいかないだろう。
勿論、経済効果などの試算において、人口という要素は非常に重要だ。そして、試算方法としても、通常の方法で行っていると思う。
しかし、人口減少社会を迎えた現在において、試算における人口の捉え方・扱い方について考え直す必要がある。
新幹線の早期開業の有無などは置いておいて、このような試算の在り方・考え方は、ある種、危険ではないかと思ってしまう。
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