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地域活性化・地域おこしの誤解・誤り

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曖昧な地域活性化・地域おこしの概念

 よくよく考えてみると、地域活性化や地域おこしという概念は、非常に曖昧だ。

 とりあえず、はてなキーワードを見てみると、次のようになっている。

地域の経済やコミュニティなどを活性化させること。村おこしやまちづくりなど。

 何となく、分かったような、分からないようなという感じだが、私が定義づけても、大きくは変わらないだろう。

 ただ、このような曖昧さを含んでいるからこそ、誤りも生まれるのではないかとも思う。


誤解1

 地域活性化と経済はつながってはいるが、完全には一致はしていない。

 ある地域の企業や産業は、当初は小さいが、どんどんと成長し、その地域経済に影響を与える。この意味で、地域活性化で潤えば、その地域の経済にとって、良いことであることは間違いない。

 しかし、地域活性化の成功事例などを考えれば、確かに成功はしているのだろうが、あくまでもミクロの視点である。マクロ・セミマクロで経済を考えた場合、その成功はほとんど影響しない。
 言い換えれば、数億円の売上を上げたなどというのは素晴らしいが、都道府県の兆円レベルというGDPの数値の中では、ほとんど影響はない。勿論、小さな村などにおいて考えれば、それなりの大きさは持つ。ただ、例えば、1万人の村で、10人の雇用を生み出しても、0.1%の雇用増加の効果しかない。

 私は地域活性化は素晴らしいと思うし、それに尽力されている方には敬意を払うが、同時に、マクロ的な視野も忘れてはならないと思う。
 また、小さな村などの成功事例を元に、それよりも大きな地域が行って成功しても、マクロ的なインパクトは母数の違いから、当然、小さくなる。


誤解2

 地域が一緒になって行う事例と、個々の事業者の事例とは、実は大きく異なる。
 よく地域おこしにおいて言われることは、「キーパーソンの存在」「若者・よそ者・馬鹿者」などといった言葉である。

 しかし、これを上記の2つのパターンで混同して考えてはいけない。

 一般的に、地域おこしを考えた場合、前者の地域が一緒になって行う事例である。
 この場合は、役所や地域おこし団体、まちづくり団体などが中心になって行うことが多い。これらの団体は、中立的であったり、利害調整団体であったり、少なくとも上下関係が少ない組織である。
 そうなると、地域の人や事業者を巻き込むためには、熱意など、属人的な要素が大きくなるので、上記の「キーパーソンの存在」「若者・よそ者・馬鹿者」という言葉は、よく当て嵌まる。

 しかし、個々の事業者の場合は、異なる。
 勿論、地域の産品や商品を売ったり、その地域から原材料を調達しているような場合には、その地域の人や事業者の協力は必要である。しかし、上記の地域が一緒になって行う事例における関係とは、大きく異なる。
 更に言うならば、現在、地域の特産品になっていたり、地域のブランド化に寄与しているようなものの中には、当初はその地域・団体から、変人扱いされたり、村八分のような事業者もいる。

 別に、個々の事業者の事例を悪く言うつもりはない。結果として、その地域に利益などを還元すれば問題はなく、地域おこしの成功事例として挙げられているものの中にも、このようなものは多い。

 つまり、ここで言いたいのは、地域活性化や地域おこしをやろうとするとき、この部分を明確に考えなければ、続かなかったり、失敗する。言い方を変えれば、このことを念頭に、地域活性化・地域おこしの仕組みをスタートさせなければならない。


誤解3

 地域活性化において、「他の成功事例を参考に、自分の地域に当てはめて考えることが重要」と言われたりする。
 この点について、否定をするつもりはないが、これはある種の誤りを招く。

 そうなると、重要な要素として、マーケティングを忘れてしまうことが多い。地域活性化の成功事例を考えれば、(偶然を含め)必ずマーケティングとして、成功している。そして、成功事例を参考にすることは重要だが、マーケットは日々変わっているので、成功事例を参考にしたマーケティングは失敗することも多い。分かりやすく言えば、B級グルメで成功したのは、B級グルメの先発グルメが多い。逆に、それを真似たB級グルメは、苦戦を強いられているということである。


誤解4

 地域活性化や地域おこしに、特効薬や奇策はない。
 なんだかんだ言っても、それらの成功事例は、数年以上の時間がかかっている。逆に言えば、数年以上の時間をかけなければ、ほとんどは地域活性化や地域おこしは成功しない。例えば、地域活性化の成功事例として、「内子フレッシュパークからり」などが挙げられるが、設立は1997年。成功事例として、注目が集まってきたのは、2000年代中頃であることを考えると、(メディアなどで注目されるまでの期間などを考慮しても)数年はかかっている。

 特に、失敗しているパターンとして多いのは、上記の「誤解2」で書いた「地域が一緒になって行う事例」で、継続性がないことである。当初は盛り上がるが、成果が出ないので、地域の人や事業者は、関わりが薄くなっていく。中心的に頑張っていた人も、成果が出ず、しんどくなっていく。また、成果が出ない中で、自分の商売や生活を優先しなければならず、地域活性化や地域おこしは優先順位として、下がっていく。


まとめ

 私は、上記で述べたように、地域活性化や地域おこしを必ずしも否定はしていないし、それに尽力されている方には敬意を払っている。
 ただ同時に、細かなテクニカルな点はおいておいて、前提条件として、上記のような誤解には注意しなければならないと思っている。

 誰の言葉か忘れたが、経済学者の言葉として、「Cool head, Warm heart」という言葉がある。
 地域活性化や地域おこしについても、温かくその取り組みを見守りながら、同時にある種の冷徹な視点が重要であると思う。

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