スポンサーリンク

単なる業界保護に過ぎない、酒税法改正案

スポンサーリンク

酒税法の改正

 議員立法で酒税法などの改正案が提出されるようだ。
 この背景には、大手小売やディスカウントストアなどにより、不当に安く商品が販売されており、小さな酒店などの経営が厳しいことにあある。そこで、酒税法などを改正し、不当な安売りを規制するようである。

2015.4.14 産経新聞一般酒販店に打撃…大規模店の「激安」酒類特売に待った 酒税法改正案、議員立法で提出

 確かに、大手スーパーなどに行くと、非常に安い価格でお酒などが売られている。発泡酒などになると、お酒にもかかわらず、ジュース並みの価格で売られており、その安さに驚くこともある。

 買う方としてはありがたいが、同時に、常々このままでいいのかと思ったりもする。




規制の妥当性について

 このような規制について、賛否を両面から見たとき、次の2つの意見になるだろう。

 1つは、現在の規制緩和の流れの中でそれに逆行し、消費者の利益に反するような規制を加えることは問題だという意見である。
 客寄せのために利益を度外視した価格で販売していることが問題視されているようだが、客寄せのために、ある商品を安くするのは、小売店の常套手段である。また、そのような小売店の手段に騙されず、バーゲン品のみを購入するようなチェリーピッカーのような客もおり、このような指摘は当たらないとも言えよう。
 そもそも、消費税増税などで消費が弱くなっている状況(もしくは今後も増税が予定されている中)で、消費者の利益に反し、消費を冷えさせるようなことは問題である。
 このことから、単に小さな酒店を保護するために、このような規制を加えることは問題だと言える。

 もう1つは、今回の改正案にあるように、小規模な酒店などを保護するためには、規制が必要だという意見である。
 お酒のみならず様々な商品アイテムを揃え、大量仕入れにより価格も安価にできる大手小売店に対しては、小さな酒店は対抗が難しい。そして、このような力のある大手小売店が上記のような販売戦術をとるとなると、一層、小さな酒店はどうしようもないという話になる。特に現在、政府としては、小規模企業支援などに力を入れていることから、何らかの規制が必要ともいえる。


本当の問題点

 私は単純な規制緩和論者ではないので、必要ならば、規制を加えればいいし、産業構造上、問題であれば規制を緩和すればいいと思っている。この点で、今回の酒税法改正の本当の問題は、規制をかけるかどうかにあるのではないと思っている。

 本当の問題は、今回、規制を加え、小さな酒店を保護したとして、将来、このような酒店や酒小売業といった産業をどうするのかという理念・ビジョンがあるかということである。

 現在は、保護し規制を加えることにより、将来的に国民に利益がもたらされるようなものであれば、問題はない。しかし、このような将来像や将来の国民への利益をもたらさないようなものであれば、このような規制は問題だ。経済学的に言えば、少なくとも頭の片隅には「ミル・バステーブルテスト」のような視点を置いておく必要があるだろう。

ミル・バステーブルテスト

 このような視点がなければ、今回の規制は一時的なカンフル剤にしかならない。そもそも上記で述べたように、仕入れコストなどの差から、大手小売の優位性は変わらないからである。

 改正案そのものはまだ公表されていないようだが、今後、小さな酒店をどうするのか、酒小売業をどうするのかといった将来的な視点がなければ、単なる業界保護に過ぎないといえよう。そして、その一時的なカンフル剤のために、消費者の負担を大きくするのは、問題である。

コメント