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世界遺産登録、どれだけの効果があるのか?


 富士山が世界遺産登録された。
 世界遺産に登録されると観光客が増加すると言われており、鎌倉のように世界遺産登録に積極的なところもある。
 そこで、世界遺産登録されている石見銀山を例に、観光客数について、どのような効果があるのかを見てみた。


 石見銀山は、平成19年に「石見銀山遺跡とその文化的景観」という名称で登録された。
 まず右の図は、石見銀山の観光入込客延べ数の推移である。登録前の2000年代前半は約30万人にであったが、登録された平成19年やその翌年には約80万人と、観光客数は2倍以上の大きな伸びを示している。しかしその後は減少し、現在では約40万人となっている。
石見銀山の観光入込客延べ数

石見銀山の観光入込客延べ数

 ここから分かるのは、世界遺産登録というのは、ある種のブームをもたらすということだ。逆に言えば、ブームはあくまでもブームに過ぎないので、ブーム終了後は、観光客は減少してしまう。

 ただし、世界遺産登録が全く意味がなくなったわけではない。むしろ注目すべきは、世界遺産登録前の約30万人の観光客数から、ブーム時よりは減少したとはいえ、現在でも約40万人と、約10万人観光客が増加している点である。

 ただ、観光客数について石見銀山全体で見ると、統計的な誤差などが生じている可能性がある。そこで、より詳細に3つの観光地(石見銀山資料館、石見銀山龍源寺間歩、河島家)に推移を見たのが、右のグラフだ。
 いずれも、世界遺産登録により大きく観光客数を伸ばしているが、その後減少している。ただ、石見銀山資料館は登録前は約3万人だったが現在は約4万人、石見銀山龍源寺間歩は約3万人から約20万人に、河島家は2千人台から1万人以上へと、高止まりしている。
石見銀山の観光入込客延べ数(観光地別)

石見銀山の観光入込客延べ数(観光地別)
 ブームは所詮ブームであるのだが、ブームが終わってもブーム前に戻るのではなく、高止まりしてその効果はしばらくは続くのである。これを「履歴効果」と呼ぶとすると、右のようなイメージになるだろう。
 そして、観光地において重要なのは、ブームはいつかは終わる以上、この履歴効果をどれだけ高め、維持していくかがポイントである。
履歴効果

履歴効果

 ここで、履歴効果の源泉を考えると、次の3つがあるだろう。

 1つは、採用遅延者などの存在である。イノベータ―理論を考えると、ある商品・サービスについては、ブームから遅れてその商品・サービスを利用する者が存在するものである。世界遺産登録時のブームからは乗り遅れているが、世界遺産ということで、観光する人がいるということである。

参考イノベータ―理論

 2つは、世界遺産登録による認知度アップである。このように、登録は勿論、ブーム化することで、多くの人に知ってもらえることができたということだ。

 3つは、リピーターの存在である。これまでは来たことがなかったが、世界遺産登録で初めて石見銀山を訪れ、好きになった人もいるだろう。そして、ブーム後もリピーターとして訪れた人もいるだろう。また、リピーターではないが、世界遺産登録で初めて石見銀山を訪れた人が、その後、口コミなどで周りの人に勧め、周りの人が初めて石見銀山に訪れるということもあるだろう。

 この3つの効果のうち、上の2つは、世界遺産登録そのものに付随する効果である。地域にとって、やはり重要なのは、3つ目のリピーターの効果である。そして履歴効果を維持・継続させていくために、地域が主体的に取り組めるのもこの効果である。

 そして、リピーターの効果を活かすには、ブームが終わってからでは遅い。ブーム時にいかに、その観光地に好きになってもらうか、また来たいと思われるかがポイントとなる。世界遺産登録により、ある種のブームがもたらされるが、ブーム後の履歴効果を考えると、ブーム時の1・2年の対応こそ、重要なのだ。

 インフラ整備などは時間がかかるため、このブームとタイミングがずれてしまうかもしれない。ブームが訪れると、これまでよりも客数が増え、日々の対応だけでたいへんにもなる。
 しかし、ブーム時にこそ、観光地としての施設・街並みなどを整え、おもてなしの心でしっかりとしたサービスを提供しないと、その後の履歴効果は弱くなり、世界遺産登録の継続的な効果は望めなくなるだろう。










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