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思っていたよりも健全? 地方財政

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概要

 先月終わりに、総務省で各地方公共団体の「健全化判断比率」が公表された。

総務省「平成25年度決算に基づく健全化判断比率・資金不足比率の概要(確報)

 健全化判断比率とは、いわゆる自治体の財政破綻を意味する「財政再生団体」などの判定の基準となる指標であり、「地方公共団体の財政の健全化に関する法律」で公表が義務付けられているものである。

 どうしても、値が悪いところが注目されるため、何となく、地方財政は良くないような気がするものである。
 ただ改めて、そう悪くない自治体が多いことに驚いた。


健全化判断比率

 健全化判断比率のうち、実質公債費比率というものがある。
 これは、簡単に言えば、それぞれの自治体の借金の返済額の割合である。

地方公共団体の財政指標

 この実質公債費比率について、高い(悪い)順に、上位5位を都道府県と町村で表にしたのが、右表である。

 北海道は、他の指標である将来負担比率も悪く、都道府県の中では最も財政状況がよくない自治体といえよう。
 また、町村では、夕張を始め、財政的に厳しいことで有名(?)な泉佐野市などもランキングしている。

都道府県 市町村
1位 北海道(21.3) 夕張市(47.2)
2位 徳島県(20.1) 大鰐町(23.8)
3位 岩手県(19.4) 泉佐野市(23.2)
4位 大阪府(19.0) 篠山市(22.6)
5位 新潟県(17.5) 黒石市(22.5)

実質公債費比率の上位5位


協議不要対象団体

 ただ、上記の実質公債費率といった指標は、地方自治体の「財政再生団体」などの判定だけに使われているわけではない。
 実は、地方自治体が地方債を発行する際に、国などと協議が必要なのだが、実質公債費率などの指標が一定未満であれば、「協議不要対象団体」として協議が不要となるという規定がある(地方財政法5条の3第3項)。

 この規定の趣旨を考えれば、ある種、財政的に健全なところは、協議などを行う必要なく、自由に地方債を発行していいということだろう。
 金額など他にも規定はあるが、実質公債費率や将来負担比率(実質公債費率が返済額に焦点を当てているのに対し、借金全体に対する比率)に限ってみたら、実質公債費率は16%、将来負担比率は都道府県300%、市町村200%未満が基準となる。

 この基準を念頭に、都道府県と市町村の実質公債費率と将来負担比率の平均を見ると、右の表のような値である。

 平均的に見れば、「協議不要対象団体」の基準を満たしていることが分かり、概ね、健全といえよう。

都道府県 市町村
実質公債費率 13.5 8.6
将来負担比率 200.7 51.0

実質公債費率と将来負担比率の平均

 勿論、「協議不要対象団体の基準が甘い」「借金は少ない方がいい」などという意見もあるだろうが、地方財政制度の枠内で、協議不要対象団体というメリットを受けられる基準を多くの自治体が満たしているということは無視はできない。


最後に

 上記で述べたように、協議不要対象団体の基準の多寡は議論があるところだろうし、税収が厳しく、ほとんどの自治体が地方交付税に頼っていることを考えると、地方財政は決して楽なものではない。

 特に、実質公債費率と人口の関係を回帰分析し、推計したのが下の式である。

  実質公債費率 = -0.027 × 人口(1万人当たり) + 9.78
          (-4.72)             (85.30)

 人口が多いほど実質公債費率は低く、人口が少ないほど実質公債費率が高くなることを示している。
 すなわち、人口が少ない自治体ほど、実質公債費率という財政指標も悪化するのである。

 人口減少に悩む地方にとっては、この点でも楽な財政運営とはいえないだろう。

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